閃光のように 第11話 |
シュナイゼルが現れた! クロヴィスが現れた! スザクはボロボロになって倒れている! C.C.はカノンの精神攻撃でまだ動けない! そんな中でルルーシュはクロヴィスからのプレゼントを受け取った。 すぐに開けてくれと言う言葉に、渋々ながら開封する。 プレゼントと言うならばまずナナリーに送るべきだろう。 なぜ俺なんだ! そんなルルーシュの心情にいち早く気がついたC.C.は肩を震わせ始めた。 「・・・なん・・・です、か、これは」 暫くの間箱の中身を見つめていたルルーシュは、重低音でそう尋ねた。 地の底から這い出してきた悪魔のようなその声に、ジェレミア達は背静が凍える思いがしたのだが、ブラコンフィルター搭載のブリタニア兄妹には、怒りで顔を赤くしたルルーシュが恥じらいで頬を染めているように見えているし、重低音は恥じらいながら話しているように聞こえるのだ。 恐るべし重度のブラコン! 「ゼロの新しい衣装だよ」 にこにこ笑顔で言うのはクロヴィス。 間違いなくこれをデザインしたのはこの男だろう。 「ほうほう、どれどれ?」 ルルーシュがその衣装に手を伸ばさないため、立ち直ったC.C.がひょっこり現れ、衣装を手に取った。色は今までのゼロ服と変わらないのだが、問題はデザインだ。 「ぷっ、これを、お前が着るのか?くくくくははははははははっっ!」 C.C.が手に取ったその服の面積は・・・小さい。 非常に小さい。 信じられない程小さい。 改めてそれを見たルルーシュはピシリと硬直し、倒れ伏していたスザクはガバリと起き上がると、その体を拘束していたロープを引きちぎり、小走りで近寄ってきた。 そして、C.C.が手にしたそれを見つめる。 それは、シュートパンツ。 しかもかなり丈が短いミニタイプだ。 股上も浅い。 上はと言うと、これまた丈が短くへそ出しだ。 ゼロの衣装に合わせた、黄色のライン入りニーハイブーツも入っている。 マントと手袋は以前とあまり変わらない漆黒のものだ。 「この男にこの衣服を着せ、マントを羽織れと?とんだ変態の出来上がりだなぁ」 あの仮面でこれとはな。 想像しただけで腹筋が死ぬ。 C.C.はお腹を抱えて笑い転げた。 「何を言っているんだい?あんな無粋な仮面など、着けるはずがないだろう?」 「そうだね、折角のルルーシュの美しさが損なわれてしまう」 兄二人はさも当然のようにそう言った。 「ルルーシュ、着てみてくれないか?」 自信作なんだよ。 「カノン、撮影を」 「イエス、ユアハイネス。写真も動画もお任せください」 見るとジェレミアもカメラを手に持っていた。 「ままままま、待ってください兄上!!俺は男ですよ!?何ですかこの衣装!」 フリーズしていたルルーシュが解凍され、動揺しながらもそう告げた。 「何も心配する事はないよルルーシュ。君ならきっと似合うだろう」 いい笑顔で言うのはシュナイゼル。 「似あうわけ無いでしょう!?どう考えても女性向けだし、布の面積が小さすぎます!大体、ゼロはその国籍さえ解らないようにするため、肌の露出もさせていないというのに!こんな!破廉恥な!!」 「くははは!何を言っているルルーシュ。これは女物だぞ?ほら、胸の部分もしっかり作られているし、腰回りも女性用に作られている。ぷははははは」 つまり、ギアスを発動して着ろと言う事だろう? 「なっ!?」 「違うね、間違っているよ。男女兼用で作っているから、男のままでも問題はない」 自信満々に胸を張るクロヴィス。 「問題しかありませんよ!!」 怒鳴る様に言うルルーシュの手を、スザクはそっと両手で包むと、真剣なまなざしをルルーシュに向けた。 「大丈夫だよルルーシュ、君なら着こなさせる。ほら手伝うから着替えようよ。いや、是非着替えを手伝わせて」 そう言いながら片手を伸ばし、衣装ケースを掴む。 「スザアァク!衣装箱を持つな!手を引くな!俺は着ないぞ、そんな如何わしい服は!!」 あまりにもルルーシュのの抵抗が激しいためナナリーは眉を寄せ考えた。 どうやら女性物で肌の露出が多いという内容。どんな衣服なのか想像するために、ナナリーはさよこを傍に呼び、詳細を聞きだすと、今だ抵抗を続けるルルーシュの服の袖を力いっぱい引っ張った。 いつになく強いその力にルルーシュは慌ててナナリーに振り返ると、そこには必死と言える表情のナナリーが居た。 「お兄様、是非着てみてください。その衣装を着たお兄様の美しいお姿を見るために、私の瞼も開きそうな気がします!」 「な・・・まさかそんな・・・」 俺がこの服を着れば、ナナリーの閉ざされた瞼が開く? まさかあり得ない! いやまて、ナナリーが嘘をつくはずなど無い! ならばナナリーの目が見える可能性があるということだ! シスコンモード全開となったルルーシュの思考は盲目になった。 「お兄様、今を逃したらもう二度と治らないかもしれません!」 「解った。すぐに着てくるよ、ナナリー!」 今までごねていたのは何だったのだろう。 そう思ってしまうほどあっさりとルルーシュは頷いた。 ナナリーにお願いされた以上全力で応えるのが兄の務め! どんなに恥ずかしくても耐えてみせる! ルルーシュは素早い動きでスザクから衣装箱をひったくった。 「C.C.来い!手伝え!」 「ぷくくくく、ああ、手伝ってやるよ」 「ちょ、待って僕が手伝うよ!」 「馬鹿かお前は。女物なら女の方がよく知っているだろう」 だからC.C.なんだ。 「大丈夫、僕脱がせるのは得意だから」 服の構造はばっちりだよ! 「は?何を言って・・・なんだ?押すなC.C.」 C.C.は笑いをこらえながらもぐいぐいとルルーシュを部屋の外へ追い出そうとする。 ルルーシュの着替えに駄犬を連れていく事は許されないのだ。 懐柔される前にルルーシュをここから出さなくては。 「スザクさんは残ってくださいね」 にっこり笑顔でどす黒いオーラを纏ったナナリーが告げる。 見るとブリタニア兄妹三人共殺気を宿したオーラをスザクに向けていた。 「スザク、お前はナナリーの傍に居てくれ」 シュナイゼルから守ってくれ、頼む。 ルルーシュが懇願するようにそう言った。 ナナリーは不安だからスザクを呼んでいるんだ、察しろ。 そう言っているように思えるが、この殺気漂う部屋のどす黒い空気を察してほしいのはこちらだと、スザクは眉尻を下げた。 「駄犬は大人しく此処に居てください」 着イテ行ッタラタダデハスミマセンヨ? にっこり笑顔で言うのだが、今動いたら殺される。そんな殺気を放っていた。 スザクが思わずナナリーの言葉に呑まれた隙に、C.C.はルルーシュと共に部屋を抜け出していた。 |